昨日の続きです。
猫背や前かがみになった状態をリセットするための体操です。
前かがみになることを、「腰痛の借金がたまる」と呼びますが、その“借金”を返す意味があります。
ただご高齢の人に多い、神経症状がある腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)の人は注意してください。
歩いていてお尻から足がしびれる人は、腰を反らすとその症状が誘発される可能性があるため注意が必要ですが、やってみて痛みやしびれが太もものほうへ響かなければ大丈夫です。
まずウエストライン、ベルトのラインが一番腰の負担がかかる部分なので、そこを猫背になった後にリセットします。
足をやや広めに開いて立ち、両手を腰の下の方(骨盤のすぐ上辺り)に当てます。
両手を支点にして、息を吐きながら骨盤を前へ押し出します。
上体が後ろに倒れますが、腰を反らせるのではなく手を当てた骨盤を前に出す意識を中心に行います.
このとき、両手はできるだけ近くに揃えるようにします。
そうすることで肩甲骨を寄せることができ、胸が開き姿勢の改善にもつながります。
膝は曲げず顎が上がらないよう注意してください。
腰を反らせた状態を、ゆっくりと息を吐き続けながら3秒間保ち、1~2回繰り返します。
「痛気持ちいい」程度の感覚であれば良いですが、殿部から太ももにかけてしびれたり強い痛みを感じたりする場合は中止してください。
足は肩幅より少し広めで平行に開き、手はなるべく小指と小指をそろえると、胸が張って肩甲骨が寄ります
(ただし、五十肩など肩が痛い人は無理しないでください)。
腰を反らすというよりも、骨盤を前にぐっと押し出すイメージです。
介護職や看護師には腰痛が多いと言われますが、集団でこの体操に取り組むと、1年後にはかなり良い結果が出ています。
痛みを取るのに重要な背中の血流を良くするというデータもあります。
多くやろうとすると続かないので、デスクワークでも作業でも、猫背が続いてちょっと違和感がある時に、「借金がたまったな」と1回だけリセットすることです。
ソファで座りっぱなしになったり重い物を持ったりした後に、1回か2回やればいいのです。
一般的にデスクワークは猫背になりますが、座りっぱなしは「セデンタリー・ライフスタイル」といって、健康に害が大きいことが分かっているので、ときどき立ってこの体操をすることをお勧めしています。
腰に違和感がある時に、よく腹筋運動をする人がいますが、雑に勢いよくやると、かえって腰痛を悪化してしまいます。
腹筋運動をする場合は、その前後にこの体操をすると、いいのではないかと思っています。
腰を守る「ハリ胸プリけつ」
また、ちょっと言葉にするのは恥ずかしいかもしれませんが、「ハリ胸プリけつ」が腰を守る姿勢のキーワードです。
重量挙げがまさにそうですが、物を持つ時に無防備に前かがみになり、骨盤が後傾すると、背中や腰を痛めやすい。
そこで胸を張り、お尻を突き出すのです。
中指を鎖骨の部分に当てて、胸をしっかり開きます。
足は肩幅よりやや広めで平行に、お尻を突き出して前へ倒れます。
なるべく反ったイメージで、前に行く時に常にこのイメージを脳と体で覚えていただくと、これ自体が訓練になります。
実際に物を持つ時は、この状態でひざを上手に使えば、ウェイトリフティングと同じポーズになります。
坐骨神経痛の場合、主に狭窄症とヘルニアの2種類があります。
「これだけ体操」は狭窄症の方では、先ほど言ったように症状を誘発してしまう可能性がありますが、ヘルニアタイプの場合は、「これだけ体操」で軽いヘルニアが引っ込み、痛みが取れる場合があります。
一度やってみて、お尻からももに響かなければ、続けていただいて結構です。
また、今はせき、くしゃみをしやすい時期ですが、その時には「ハリ胸」までいかなくても、前に手をつくだけでずいぶん腰の負担が減らせます。
立ってテーブルに、あるいは座ったまま太ももに、ちょっとハリ胸で手をつくと、腰にかかる負担をずいぶん軽減できます。
手をつくことが本当に、ちょっとしたぎっくり腰予防に役立つのです。
くしゃみをすると、ウエストラインの椎間板には最大300キロ・グラム重、つまり相撲取り2人分ぐらいの負荷がかかります。
負荷が340キロ・グラム重を超えると、ぎっくり腰やヘルニアが起こるとされますが、それが手をつく工夫で、実に半分以下まで椎間板への負荷を減らせるのです。
テレビをソファでご覧になる場合、「ハリ胸プリけつ」とは逆の姿勢となり、腰の“借金”がたまります。
これが積み重なると、朝ちょっと顔を洗う時などに、ぎっくり腰をやってしまう。
ソファに座るなとは言いませんので、座る前に「これだけ体操」をまず1回。
座っていて負担がかかってきたなと思ったら、その場でまたリセットすると、ずいぶん違うと思います。
猫背など悪い姿勢をとっても結構ですが、ただし“借金”を貯めすぎない。そして物を持つ時は、「ハリ胸、プリけつ」を意識していただければと思います。